タイトル
企業がディープフェイク被害に気づいたら?フェイク動画への初動対応と正しい情報の届け方
- 01ディープフェイク被害は状況を分けて考える
- 02企業で報じられたディープフェイクの事例
- Arup:偽のビデオ会議を使った送金被害
- WPP:経営者を装ったメッセージと音声
- 03被害に気づいたときの初動対応
- 1. 続いている取引・指示を止める
- 2. 後から確認できる形で記録する
- 3. 別の連絡経路で本人確認を行う
- 4. 対応責任者と関係部署を決める
- 5. 影響範囲と伝える相手を整理する
- 6. 通報・削除依頼・外部相談を進める
- 04公式発表は「確認できた事実」から出す
- 05正しい情報を届ける方法を選ぶ
- 06平時から決めておきたい5つの備え
- 1. 高リスクな依頼の確認方法
- 2. 公式な発信場所と管理者
- 3. 公開している人物素材の把握
- 4. 緊急連絡網と発表文のひな型
- 5. 確認訓練
- 07制作会社に相談できること
- 08ディープフェイク被害への対応でよくある質問
- 偽動画は見つけたらすぐ削除すべきですか
- 公式発表で「ディープフェイク」と明記すべきですか
- 09まとめ:判定より先に、被害を止めて正しい情報を届ける
経営者の顔や声を使った偽動画、本人そっくりの音声による送金指示、企業を装ったSNS投稿。ディープフェイクの被害は、不特定多数に偽情報が広がるケースと、社内や取引先を狙った詐欺に使われるケースがあります。
被害に気づいたとき、映像の不自然さだけから「AIで作られたか」を判定しようとすると、対応が遅れるおそれがあります。先に確認したいのは、その発言や依頼が本物か、金銭・アカウント・信用への被害が続いていないか、誰に正しい情報を届ける必要があるかです。
この記事では、企業がディープフェイクの疑いに気づいた直後の対応、社外への伝え方、平時に決めておきたい備えを整理します。
※本記事は一般的な対応の考え方をまとめたものです。実際の事案では、被害状況に応じて警察、弁護士、金融機関、セキュリティ事業者、投稿先のプラットフォームなどへご相談ください。
ディープフェイク被害は状況を分けて考える
同じ「偽動画」でも、起きていることによって緊急度と最初の連絡先が変わります。まずは次の3つに分けて状況を確認します。
| 起きていること | 主なリスク | 最初に行うこと |
|---|---|---|
| 経営者などを装った送金・情報提供の指示 | 金銭被害、機密情報の流出 | 手続きを止め、本人確認と関係部署への連絡を行う |
| 偽動画・偽音声がSNSやWebで公開されている | 信用低下、顧客や取引先の誤認 | 証拠を保存し、影響範囲と訂正先を確認する |
| 公式アカウントや社内システムの悪用が疑われる | 偽情報の拡散、追加の不正アクセス | アクセスを制限し、情報システム・セキュリティ担当へ連絡する |
複数が同時に起きる場合もあります。たとえば、偽の経営者動画を見せながら送金を求め、同時にメールアカウントを乗っ取って承認を装うケースです。その場合は、証拠保存だけを終えてから次へ進むのではなく、送金停止やアカウント保護を並行して行います。
企業で報じられたディープフェイクの事例

企業を狙った事例を見ると、顔や声の精巧さだけでなく、急な依頼、普段と異なる連絡手段、通常の承認手続きから外れた指示が組み合わされていることが分かります。
Arup:偽のビデオ会議を使った送金被害
2024年、香港では、英国本社のCFOなどになりすました事前収録の映像がビデオ会議で使われ、社員が複数の口座へ合計2億香港ドルを送金する被害が発生しました。香港政府の公表によると、犯人は公開されていた映像や音声を利用し、会議中に自然なやり取りが行われているように見せていました。
この事例から分かるのは、画面上に知っている人物が映っていても、それだけでは承認の根拠にならないということです。高額送金や機密情報の提供には、登録済みの連絡先への折り返しや複数人による承認など、映像とは別の確認方法が必要です。
参考:香港政府「Written reply to LegCo question on combating frauds involving deepfake」
WPP:経営者を装ったメッセージと音声
広告大手WPPでは、CEOの写真を使った偽のWhatsAppアカウント、Microsoft Teamsの会議、音声クローンなどを組み合わせた詐欺未遂が報じられました。社員に新しい事業を立ち上げるよう持ちかけ、金銭や個人情報を得ようとしたとされています。
このケースでも、手口は一つではありません。メッセージ、会議、音声を組み合わせて信頼させようとしています。表示名や声の一致よりも、「この連絡経路で、この依頼が来ることは通常あるか」「正式な承認手続きが守られているか」を確認することが重要です。
参考:The Guardian「CEO of world’s biggest advertising firm targeted by deepfake scam」
被害に気づいたときの初動対応

初動では、被害の拡大を止める対応、記録を残す対応、社内外への連絡を並行して進めます。次の順番は目安であり、送金や不正アクセスが続いている場合は、緊急度の高い対応を優先してください。
1. 続いている取引・指示を止める
送金、契約、機密情報の送付、アカウント変更など、偽の依頼に基づく手続きが進んでいないか確認します。未処理であれば保留し、すでに送金している場合は金融機関と警察へ速やかに連絡します。
公式アカウントや社内システムの不正利用が疑われるときは、情報システム・セキュリティ担当と連携し、該当アカウントの利用停止、認証情報の変更、接続状況の確認などを検討します。必要な措置は環境によって異なるため、自己判断でログや端末内の情報を消去しないようにしてください。
2. 後から確認できる形で記録する
偽動画や投稿が削除・編集される前に、次の情報を保存します。
- 投稿や動画のURL、アカウント名、プロフィール画面
- 投稿日時と発見日時
- 画面のスクリーンショットや画面録画
- メール、チャット、通話履歴、送金指示の内容
- 社内で行った対応と、その日時
- 問い合わせや苦情が届いた相手と内容
元データは加工せず保管し、社内共有用には複製を使います。公開範囲を広げると被害を再拡散する可能性があるため、関係者だけが確認できる場所で管理します。
3. 別の連絡経路で本人確認を行う
問題の動画や音声と同じ連絡先へ返信するだけでは、なりすました相手につながるおそれがあります。社内名簿に登録された電話番号、対面、普段使っている別の連絡手段などから、本人または責任者へ確認します。
ここで確かめるのは、映像がAI生成かどうかだけではありません。本人がその発言や依頼をしたか、正式な承認を得ているか、公式アカウントが管理下にあるかを確認します。
4. 対応責任者と関係部署を決める
広報だけで対応を完結させず、事案に応じて経営層、法務、情報システム、財務、営業、人事などを集めます。対外発表の承認者、プラットフォームへの連絡担当、顧客・取引先への説明担当を決め、情報を一か所へ集約してください。
同じ事実について部署ごとに異なる説明をすると、混乱を広げます。確認済みの事実、調査中の内容、外部に出さない情報を区別し、更新日時も記録します。
5. 影響範囲と伝える相手を整理する
次の項目から、誰が誤認し、どのような行動を取る可能性があるかを確認します。
- どの媒体で、いつから公開されているか
- 再生数、共有状況、転載先はどの程度か
- 顧客、取引先、社員、応募者のどこに影響するか
- 偽の送金先や連絡先へ誘導されていないか
- 公式アカウントや社内システムへの侵入があるか
すべての調査が終わるまで発表を待つと、誤情報だけが広がる場合があります。緊急性が高いときは、確認できた範囲で短い注意喚起を出し、詳細は後から更新します。
6. 通報・削除依頼・外部相談を進める
投稿先の通報機能や削除申請を利用するときは、保存したURLや画像、権利侵害の内容を整理して提出します。金銭被害や犯罪の疑いがある場合は警察と金融機関へ、アカウント侵害など技術的な問題がある場合はセキュリティの専門家へ相談します。
公式発表は「確認できた事実」から出す
初回の発表で、原因や手口の全容まで説明する必要はありません。被害を防ぐため、まず次の情報を短く伝えます。
- 問題の発言・依頼が自社のものではないこと
- 送金、入力、返信、共有などをしないよう求めること
- 自社が情報を出す公式サイト・公式アカウント
- すでに行動した人の連絡先
- 次の更新予定、または情報を更新する場所
生成方法を確認できていない段階で「AIによるディープフェイクです」と断定するより、「当社が発信した動画ではありません」「当社からの依頼ではありません」と、確認済みの事実を伝える方が正確です。
警察やセキュリティ事業者による調査に影響する情報、個人情報、攻撃者しか知らない情報は、発表前に公開可否を確認します。初報、続報、最終報告を分け、発表日時と更新箇所が分かる形にすると、古い情報だけが残るのを防ぎやすくなります。
正しい情報を届ける方法を選ぶ
被害が起きたからといって、すぐに長い説明動画を作ることが最善とは限りません。緊急度、内容の複雑さ、対象者に合わせて方法を選びます。
| 伝える目的 | 向いている方法 | 制作時のポイント |
|---|---|---|
| まず行動を止めてもらう | 公式サイト・SNSの短い文章、メール | 結論、禁止する行動、問い合わせ先を先に示す |
| 経営者本人が立場を示す | 本人出演の短い動画 | 公式サイトから案内し、撮影日時や発表主体を明確にする |
| 複雑な経緯や対策を説明する | 図解、テロップ、ナレーションを使った動画 | 事実、調査中の内容、今後の対応を分ける |
| 顧客・取引先へ個別に説明する | メール、文書、説明会 | 相手ごとの影響と取るべき行動を具体的に伝える |
動画は表情や話し方を含めて伝えられる一方、制作には確認と時間が必要です。初報は文章で出し、その後に経営者メッセージや図解動画を追加する方法もあります。
また、偽動画を否定するために別の動画を出しても、視聴者がその動画自体を疑う可能性があります。公式サイトに発表文と動画を掲載し、既存の公式アカウントから同じページを案内するなど、発信元を複数の経路で確認できるようにします。
平時から決めておきたい5つの備え

1. 高リスクな依頼の確認方法
送金、口座変更、機密情報の送付などは、動画や音声による指示だけで実行しないルールにします。登録済み番号への折り返し、複数人の承認、一定額以上の追加確認など、普段の手続きとして定めることが大切です。
合言葉や本人しか知らない質問は補助にはなりますが、情報が漏れれば使えなくなります。一つの方法に頼らず、連絡経路と承認手続きを組み合わせます。
2. 公式な発信場所と管理者
公式サイト、SNS、動画チャンネル、メール配信など、緊急時に使う発信場所を一覧にします。更新担当者と承認者、ログインできない場合の代替手段も決めておきます。
3. 公開している人物素材の把握
経営者インタビュー、採用動画、講演映像、音声配信など、顔や声が分かる素材の掲載先を記録します。公開をやめる必要はありませんが、退職者や役職変更があったときに更新できる状態にしておくと、偽情報との比較や説明がしやすくなります。
4. 緊急連絡網と発表文のひな型
経営層、広報、法務、情報システム、財務、外部専門家の連絡先をまとめます。「当社からの発信ではない」「指定先へ送金しない」など、初報に必要な項目をひな型にしておけば、事実に合わせて早く修正できます。
5. 確認訓練
実際に偽の依頼が届いた想定で、誰へ連絡し、どこで承認を止め、どの媒体から発表するかを確認します。手順書があっても、担当者不在やアカウント障害で使えないことがあるため、定期的に見直します。
制作会社に相談できること
ディープフェイクの鑑定、投稿の削除、法的判断、サイバー攻撃の調査は、それぞれの専門機関へ相談する領域です。一方、確認済みの事実をどの順番で伝えるか、本人出演と図解のどちらが適しているか、既存素材をどう更新するかといった映像表現は、制作会社へ相談できます。
ファーストトーンの映像制作では、動画の目的や伝える内容をヒアリングし、企画構成、撮影、編集、グラフィック制作などを組み合わせて制作します。被害発生後の説明映像に限らず、平時に経営者メッセージや企業説明動画を準備する場合も、使用場所と更新方法を先に整理しておくことが重要です。
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スピード感をもってお返事させていただきます。
ディープフェイク被害への対応でよくある質問
偽動画は見つけたらすぐ削除すべきですか
まずURL、投稿者、日時、画面などを記録します。そのうえで、拡散や二次被害を抑えるための通報・削除依頼を進めます。証拠保存と削除依頼はどちらか一方ではなく、可能な範囲で並行して行います。
公式発表で「ディープフェイク」と明記すべきですか
生成方法を確認できている場合は説明できますが、未確認の段階で断定する必要はありません。まず「当社が発信したものではない」「この依頼には応じないでほしい」と、確認済みの事実と取るべき行動を伝えます。
まとめ:判定より先に、被害を止めて正しい情報を届ける
ディープフェイクの疑いに気づいたら、依頼や発言が本物かを別の経路で確認し、続いている被害を止めて証拠を保存します。社外への発表では、確認済みの事実、取ってほしい行動、公式な情報源を先に示してください。
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